龍の薬part27 春土用の養生 口内炎に効く薬膳
2024.04.22
桜の花が散り、新緑の葉が映え目に優しい風景が広がるようになっています。季節は「春土用」の期間に入りました。
土用の丑の日はウナギを…と夏の土用は意識されますが、土用は立春、立夏、立秋、立冬の前18日間を指し、年に四回訪れます。土用とは新しい季節に移るための期間で、人間を含め、自然界の活動が活発になる時期と言えます。
今年の春の土用は4月16日から立夏5月5日の前日までを指します。
1年を通じて、土用の時期というのは「脾」が働いて五臓(肝、心、脾、肺、腎)を養うので、脾の働きが弱いと身体全体の調子が悪くなってきます。
漢方で言うところの「脾」は胃腸全体の働きのことを指します。食べ物の入り口であり、そこがうまく働かないとどんなに良い物を食べてもエネルギーをうまく作り出せなかったり、栄養を身体に行き渡らせることができず、浮腫みや痰、鼻水等の不要な排泄物に変化してしまうこともあります。
~「脾」を労わるには~
○甘い物を摂り過ぎない~甘いものは「脾」を補いますが、摂りすぎると「脾」を傷めます。
○生もの、冷たい物、脂っぽい物も同様です。砂糖の入ったものや果物、脂や砂糖を用いたケーキやアイス、チョコレートの摂り過ぎには気を付けましょう。
○「脾」の働きが増す土用(季節の変わり目)に体調を崩しやすい人は脾が弱まっている可能性があります。
○「脾」は湿に弱いです。身体を適度に動かして血液や体液の循環を良くし、湿や痰(不要な排泄物)を溜めない生活を心がけましょう。
○胃腸の働きを労わるために、「消化の良い物を食べる」「よく噛んで食べる」「腹八分目」を心がけましょう。
○生野菜、生魚よりも火を通しておくことで消化にかかるエネルギーを補ってくれます。温野菜や火を通した肉、魚を中心に摂ると良いでしょう。
また、「脾」が弱まっている体のサインとして、口内炎の発症が挙げられます。
漢方では、「脾は口に開竅する(五臓の状態が特定の器官に反映されるということ)」「心は舌に開竅する」と言われており、口やベロの炎症が脾や心の状態を表すと言われています。
口内炎ができる時に考えられる背景の一つとして、暴飲暴食や刺激物の強い物、飲酒や脂っこいものを食べることで胃がオーバーヒートして胃に熱が生じている場合(胃熱)があります。季節の変化が目まぐるしい季節、脾を弱めやすい季節に歓迎会や花見会などで、さらに胃腸の調子を崩すということもあります。
口内炎はその他にもいろいろな原因から口の中が荒れて痛む病気です。栄養バランスが偏っている場合、胃腸に障害がある場合、精神的ストレス、口腔内の不潔さ等原因は様々ですが、口内炎は一度治っても再発することが多い為、起こしやすい人はバランスの取れた食事を心がけ、歯磨きやうがいで口腔内を清潔に保つようにしましょう。
今回は「口内炎に関わる薬膳」をご紹介いたします。
○口内の病気の特効薬~ナス
なすは体内の熱を冷まし、痛みや腫れを鎮める働きがあり、昔から口内炎の特効薬と言われてきました。口内炎になった時はナスの黒焼きをハチミツで練って患部に塗ると効果があります。
また、ナスのヘタを切り取り、日光にあててカラカラに干したものを患部に貼ると炎症を鎮めることができます。このヘタの部分は歯痛止めにも効果があります。
○胃に原因がある口内炎に~大麦
大麦に含まれる食物繊維とフィチンの働きは整腸作用に優れ、消化を促します。
大麦は口内炎に掛かりやすい人に向いた食べ物の一つです。
大麦粥やはったい粉(大麦の粉)1日3回、白湯で溶いて飲むことによって症状が軽くなります。
○熱をとって痛みを和らげる~トマト
トマトには胃酸の分泌を促進して消化を助け、胃を丈夫にする作用もあります。
トマトに含まれるビタミンB2は血液をきれいにし、ルチンは血管を丈夫にします。
こうしたトマトの持つ作用は口内炎にも効果的です。
○塗ってもうがいしても効く~キハダ
口内炎で痛みがある時はキハダの内皮、クチナシの実、ナンテンの葉をそれぞれ10gずつ細かく刻んでガーゼに包みます。これを口の中に含んでいると症状が治まります。
キハダの内皮の煎じ汁は、キハダ3~6gを400mⅬの水で半量に煎じ、布で漉した汁でうがいをすると痛みが楽になってきます。
○口内炎の早期治療に~エビスグサ
エビスグサは消化を助け、痛みを抑える働きがあり、エビスグサのうがい薬は口内炎に効果的です。
乾燥したエビスグサの種子(生薬名はケツメイシ)5~10gを600mⅬの水で100mⅬになるまで濃く煎じます。外皮が破れて粘りが出てくるまでが目あすです。
この煎じ汁を口に2~3分含んでから吐き出します。数回繰り返すと口内炎が早く治ります。
~以上の記事は「食べて治す医学大辞典」、「漢方・東洋医学の馬場薬局」のHPを参考に作成しています~